2021年7月12日月曜日

相手の意識のまま動作する 6期4回目大阪明鏡塾レポート

  春雨の日、皆やっていることが明確になり、煮詰まることもなく集中し、午後休憩もなくぶっ通しで終わった。今回のキーワードは「感情」だった。

 

●冒頭の宿題:「姿勢に注意し、腰を引けないようにする」に関して

 癖をとるためにするなら、気がついた時にするだけではダメで、24時間するくらいでないといけない。癖は自分が長年かけて身につけたもので、癖はなかなか取り除くことはできないので、新たな癖で上書きすること。

 

A)    今回の明鏡塾のワークについて

1) 「背中を触れる」ワーク(21組、腹臥位)

 Hさんはじめ、いろいろな人と組んだ。HさんやOさんなどから、「だいぶ気持ち良く触れられたが、もっと深いところに踏み込んで来て欲しい」という、同じ指摘をされた。これは自分も自覚している課題だ。相手につい遠慮してしまい、ひどいときは相手を無視したような勝手な応対をする。自分の感情に蓋をしているのが原因か。

この殻を破るには、あの手この手で発憤して難度も挑戦する、もしくは遊び感覚で我を忘れるほど集中してするところから始めるしかないだろう。

今回は、「部分を触れる」、「全体を触れる」と二通りの触れ方があることを教わった。人に触れるとき、(1)部分を触る(肩や背中など手が触れた部分)、(2)全体を触る(相手の肉体全部というより意識体全体)、と意識を変えることができる。

日野先生がデモで部分と言って触れられると、手から背中がくっきり浮き上がるように見えた。次に全体と言って触れられると、全体が包まれるように浮き上がって見えた。日野先生の意識の明確さ、意識の向け方、使い方にはいつもながら驚かされた。

「部分を触れる」では、背中を触れて、背中をほぐす。背中がほぐれるのを感じ取る。

「全体を触れる」では、相手の肉体にとらわれず、相手の体全体、意識体を感じ取るように触れる。

全体を触れるで、日野先生から「漠然と触れるのではなく、まずひな型がいるで」というアドバイスがあった。そこでまず触れる前に自分なりのひな型を思い浮かべ、実際触ってみたとき、刻一刻、手や体で感じ取った情報でそのひな型を修正していった(その際、大脳・頭は働かせないこと)。私の場合、ひな型は、体表から推測できる解剖図(その人の体型なりの骨格や筋肉、血管、内臓などの配置を推測)に、自分が相手を見て予測した相手の呼吸のリズムやイライラや緊張度などの意識状態を合成させて作った。

 

今回は、手や全身を活性化させるために、

12人組になり、半身で立って両手を合わせて押し相撲をする。

2)腰を引かない練習として、相手の近くに立ち、相手の首の後ろに片手をピタッと当て、もう片手は相手が自分の首に添えた腕に添えて組み合う。そして相手の首の後ろに添えた方の肘と膝を同時に落として相手を倒す。

という、2種類の武道ワークを行った。

 いろいろな注意事項で頭がいっぱいになったころ、頭で歌を歌いながら背中をふれる、をした。手の反応に心身を任せてしまう、大脳によけいな邪魔をさせないようにするのが目的だ。やってみると、手や体が勝手に相手の背中を感じながら自然にきちっと触れていた。

 

2) 「うつ伏せで寝た人の背骨を伸ばす」ワーク (2人1組、腹臥位)

うつ伏せになった人の胸椎下部から腰椎までの椎間を広げるワーク。うつ伏せの相手の背中の横に坐り、片手を仙骨あたり、もう片手を胸椎下部あたりに置く。相手の呼吸に合わせて、相手が息を吐くときにじわっと脊椎の間を伸ばすように、両手に力を加え、相手が息を吸うときは伸びた感じをキープする。それを3回繰り返す。両手の人差し指の付け根付近を中心に圧をかけ、手のひらを返すように広げていく。外見上、手の位置はそんなに広がっているように見えないが、骨はしっかり伸ばされているように感じられた。やっている方は、手だけの小手先でなく、上腕や肩、体幹を中心とした体全体の筋肉を使う作業となり、けっこう力が必要だ。

 

3) 「立っている相手の呼吸に合わせて入り込み、前に歩かせる」ワーク(21組、立位)

 相手に片腕を直角に曲げてもらい、大きくゆっくり呼吸動作をしてもらう。数呼吸してリズムがつかめたら、相手の吐く息のリズムに合わせて一息で相手の横に入り込み、吸うときに直角の前腕と背中に手を添えて、次の吐く息のリズムで前に一緒に歩くように誘導する。これは、相手の呼吸のリズムを手がかりに相手の意識状態をとらえ、終始相手の意識や呼吸の流れを乱さないように、一連の動作をする練習である。武道教室でも練習をしているおかげか、自分の意識でなく、あくまでずっと相手の意識のまま、一連の動作をさせてもらう、ということが前よりは少しつかめてきた。今後の課題としては、精度を上げていくことと、いつでもどんな人でも同じように出来るようにしていきたい。

日野先生からお返事:

 「あくまでずっと相手の意識のまま、一連の動作をさせてもらう、ということが前よりは少しつかめてきた。」

 この稽古は、色々な意味で、つまり、社会を生きる上で、あるいは、人との関係において、また、仕事の中で、いちばん大事なところだと思っています。

 宇宙に広がる星、星と衛星、そんな関係だと感じるからです。

 天体においては「重力」が、その関係を司っているので、私は「重力」という力が関係を生み出しているのだと考えています。

 もちろん、それらは人が作り出した名称に過ぎないのですが、天体に整合性が有るのか無いのかは知りませんが、とりあえずは「重力」が関係そのものを担っていると考えます。

 

 呼吸を合わせる、というのは、この重力場を作り出しているのと同じで、その重力が大きければ、他の星を引き寄せるし、星とバランスがとれていれば、等しい距離を保ちます。

 この場合は、合わせた側の重力が少しだけ大きくなければ、相手を誘導できない、そんな考え方です。

 「少しつかめてきた」は、嬉しいですね。

 「誰とでも」を目指して下さい。


4) 「寝た人を呼吸のリズムに合わせて起こす」ワーク(21組、仰臥位と坐位)

 相手に仰向けに寝てもらい、吐くときに両腕を天井の方へ突き上げてもらう。呼吸のリズムをわかりやすくしてもらったら、首の後ろに片手をピタッと当てて、もう片手で相手の動いている前腕に手を添えて、相手の呼気のリズムに合わせて起こす。ヒントが多くてすんなりと起こしやすくなった反面、起こしにくいときに課題が見つかりやすくなった。自分の右と左の速度が違う、相手の呼吸の速度、呼気吸気の境目のタイミングが合っていない、首の後ろの手で呼吸を感じていない、相手の重さを手できちんと感じてなく起こそうとする時力を入れすぎる、などの気づきがあった。

 日野先生から、「呼吸に合わせる」という一つのことでみんな全員にできるようにならないと、技と呼べない。深く技術をみがいていくこと、という教えがあった。

 

5) 「左手で炎症をとる」ワーク(21組、坐位)

まず、左手を床につけて、床の冷たさを手だけでなく前腕でも冷たさを感じるように待つ。なんとなく前腕でも感じとれるようになったかな、となったら、準備完了。

相手の腕をペシッとしばいて、腫れるような痛みを作ったら、その患部を左手で探るように動かし、左手だけでなく、左手から前腕までじっくり患部の腫れ、熱さを吸い取るような感じでじっくりと感じる。そうすると炎症が取れる。

なお、右手だと腫れはかえってひどくなるそうだ。(なお日野先生は訓練しているので、意識をコントロールでき右手でも取れるとのこと。)

手を意図的にかざしたらだめ。野生動物が地面にえさがないか視線で探っている時のような感じで手を動かすこと。

 

6) 「坐った人の片腕を両手で持ち、肩、背中、腰へと動かし腰でバンドをつくって立たせる」ワーク(21組、坐位と立位)

 坐った相手の片腕に両手を添え、肘に近い手で相手の肩を前→上→後ろへと繊細に感じながら動かし、背骨を上から下へ行って、前腕から肘を外旋させることで腰を横にゴムがねじれるようにしてバンドをつくり、バンドごと相手を椅子から立たせる。肩から背中の動きを省略したワークも行った。以前は難しくて全く分からなかったワークだが、今回は腰に筋肉の筋のゴムバンドがねじるような感覚を感じられて、相手を椅子から立たせることができた。

 

B)    今回の明鏡塾を終えて

「感情」にも深い意味がある。道を究めるに当たっての求道心の根っこは「感情」だ、とお聞きした。現代では感情が自然に出ているのは、3歳くらいまでで、それ以後は全部親や社会が感情を殺す方向へ持って行ってしまっている。よって、ほとんどの人は生命力が弱くなっている。自分にも小学生くらいから、死んだように生きている感じがある。しかし嘆いてばかりでも仕方ないので、今からでも感情を生き生きとさせる方向に修正していきたい。

では具体的にどうすれば?だ。今やっていることを、自分が楽しめるように取り組む。自分が楽しい、面白いと感じなければ、新たな癖を獲得するために24時間やり続けるというのは無理だ。そういう意味で、いろいろなワークでの教え、自分なりの気づきを、日常生活や仕事で応用して、自分なりの遊びに変えていくことが大事だ。

同時に、自分の中にある感情と真剣に向き合う。ここが甘いから何事もピリッとしない感じがするのだろう。深いところにある感情は、自我が何重にも蓋をしている。このことは内観、坐禅、瞑想などで経験しており難しい。今後、歌を歌うなどのワークや、日野武道の訓練、武禅などで徐々に掘り下げていきたい。

今回、背中を触れるで、全体を触れようとするときに、自分なりのひな型が必要という話を聞いたのは面白かった。日常で普通にやってしまっている、自分なりのひな型で対応すると、人を物扱い、幻想扱いになり、終わっている。人に実際に触れて、感情を動かし、今今の瞬間に体の感覚でひな型を修正し、「自然」そのまま、自分と相手が一体化する、が大事だ。

日野先生に歌を聴いてもらったときや、ワークがまぐれでうまくいったときは自分がいなくなり、喜びを通り越し、感情というより感動で言葉が出ない状態になる。こういう奥深いところに心がいつもアクセスできるようになりたい。

また今回は、相手と共鳴すると自然の流れにのれ、自意識や癖などなくなり、病気や具合の悪さがどこかに消えることが、ほのかに実感できたのも良かった。

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