2020年12月3日木曜日

5期6回目大阪明鏡塾レポート

202010月、大阪5期最終回。

今期の明鏡塾はリピーターばかりの集まりとなり、皆のレベルが一様に上がった中、充実した時間を過ごせた。いろいろ試すのが面白くなり日常でつい何か集中して試すことが多くなった。明鏡塾翌日は毎年慣例のインフルエンザ予防接種の予約初日で、今年はコロナ不安の影響もありごった返していたが、「無駄な情報を相手に与えない」というワークがそのまま生きて、驚くほどスムーズに仕事が進み、診療時間を延長することなくきっちり終わった。今までになかったことだ。

 

 前回の宿題「そのものに相応しい触れ方をする」に対する問答で印象に残ったこと:

1)自分に正解があるかのように目標を立てて行動しているが、自分の中には正解はない。相手や対象物との関係に自分がふさわしくなるかどうかで正解が決まる。例えば宮大工が高価な木を切って建物にふさわしいものにするのと、日曜大工が自分の尺度で木を切り棚を組み立てました、終わり、みたいに、プロとアマチュアとの違いがある。周りの状況は刻々と変化するが、相手や対象に関係して自分が最善をつくし対応できるかが大事。

2)字も相手との関係性を持つための橋渡しである。相手に読めるように字を書かないとだめ。

 3)自分を成長させるためには、他人が差し出す絶対的なものさしが必要。それをこなすため、とにかく徹底的に行く。評価は後から来るが、そんなことはどうでもいい。「やってんのはオレだ」という心、それこそが自己肯定。

 

A)    今回の明鏡塾のワークについて

1) 「体重移動」(21組、立位)

 今回も武道の体重移動から。Oさんとしたが今回も全く出来ず。しかし中指の指先と膝の一点に意思を集中させて感じて、それを持続させたままその2点だけを同時に動かしていくというワークは面白い。意思についてそんな訓練ができるのか、と新鮮に感じた。意志で特定の場所を感じたり感じなくしたり選んでいるんやで、と飲み会で教わった。意志の可能性は無限大だ。また自分の身体操作として、重い雪(相手の体重)がのった日本家屋の柱を自然に倒してきれいに崩す動作の訓練をしているようにも思えた。

2) 「背中を触れる」ワーク(21組、臥位)

 5期最終日だったので皆と行った。印象に残ったのはIさんやOさんだった。Iさんは気持ちの温かさが感じられ、Oさんは手が触れている気配が左手の指先以外ほぼ消えていて不思議な感じがした。私は皆から一様に前半は優しく触れられていて違和感は少なかったが、後半は圧迫されるような感じがしたという感想をもらった。背中を触れていると、しばらくして相手の体の様子を手でどこまで探れるか試してみたい欲求が出て、自我がじゃまをしたと思われる。相手の身体の様子、動きや意識状態、気配が自分のことだと手で感じられると良い状態になった気がした。

3) 「立っている相手の両前腕を持ち、肩を後→上→前から肩甲骨を外側に広げ背骨を頭側へ伸ばし前屈しやすくする」ワーク (2人1組。立位)

まず相手に前屈してもらい手がどこまで下がるか確かめる。そして相手の両前腕を持って手で相手の肘、肩の後ろ、上から前と感じ、動かして、肩甲骨を外側に広げるように上背部を頭側へ伸ばし、背骨を上へと順に引っ張り上げる。背中の筋肉を頭側に十分伸ばせたら、再度相手に前屈してもらって、的確に筋肉が伸ばせているか確かめる。同様の前腕から肩などを動かすワークと動かす方向が違っただけであるが、正確に手で感じて動かしていないのが明確にあぶり出された。受けると、相手から手の力みなど、いらない信号をいっぱいもらっており、動かされている場所が行ったり来たりしたり、迷子になったり、あさっての方向に動かされたりしているのがよく分かった。手の感覚と意識の集中の訓練をひたすらして終わった。

4) 「両腕を持って椅子から立たせる」ワーク(21組。椅子坐位)

両前腕を両手で持って、相手の肘、次に肩を前・上・後ろ→背中の上から下へ動かし→骨盤をひっかけて相手を持ち上げて、椅子から立たせるワーク。

皆があまりに出来ないため、次に、肩から背中の誘導なしで、肘から直接背中の外側から腰椎に向けてバンドをつくり、相手を立たせるワークを行った。

受け手がどこを動かされているか、実況中継しながら行ったが、皆動かそうとしている所と別な所が変な方向へ動かされているのを知って、とまどうばかりだった。日野先生にしていただく機会があったが、日野先生は的確な場所を的確な方向へ動かされているのがよくわかり、本当に無駄な信号が受け手に来ないのに驚きだ。自分らは手や体からいかにいらない信号を相手に与えているのか、よく分かった。相手や自分の力加減、状態をちゃんと感じていないし、手が終始ピタッと相手に触れていない。

5) 「手のひらを腰椎下部から仙骨部に当てて椅子から立たせる」ワーク(21組、椅子坐位)

坐っている相手の前腕を片手で持って準備して、もう片方の手を相手の腰椎下部に、手のひらから中指の先へと、下の骨へ丁寧に同じ圧で点を移動させながらピタッと当てていく。指先まで行ったら、点を移動させたのと同じ速さで、相手の腕と仙椎に当てた手を含めた体全体で、意識を切らさずに相手を前に立たせるように体移動をする。

日野先生の手本は、腰椎下部に当てた手が相手の体幹をかっちりと捉えたように見えて、かつ無駄なく同じ速さで相手が立ち上がるのと一緒に意識や体が一体となって動いていた。自分たちがやると、腰椎下部に当てた手の動きがぎこちなく、腕の誘導の速さも手などの力加減も全然合わなかった。

6) 「相手の意識状態の変化を察知する」ワーク(21組)

前回と同じく、相手が前に進もうと意識した瞬間を察知して、手を出して止めるワーク。今回は、止める役の人が後ろ向きになり、相手が前に出たと感じたときに手を挙げるというワークも行った。私はしばらくすると小野さんが前に足を踏み出す気配を感じることができたが、小野さんは後ろ向きだと最後まで私が足を前に踏み出すのを察知できなかった。私が相手に向かう意識が弱いのも一因だ。しかしそのワークをした後では、正面同士に戻ってストップをかけたとき、意識の起こりをとらえるタイミングが明らかに早くなっていた。

7) 「吐く息に合わせて相手を椅子に座らす、床に倒す」ワーク

正面に向かい合って立ち、相手の呼吸と自分の呼吸を文字通り合わせる。その呼吸の動きの速さで、意識を終始切らさず、ずっと合わせた状態で、吐く息に合わせ、自分の体を動かし相手の左から背後に周り、左腕を相手の左腋に入れて支え、右手を相手の下腹部へおいて、吐く息に合わせて右手を上から下へと転がすように当てて、相手の腰を折るように倒し椅子に座らせる。もしくは床に倒す。

 このワークも難しかった。そもそも呼吸を合わせるのが難しく、相手の呼吸で自分の体のすみずみを動かすのが出来ず、近づこうとしているところから違和感があった。その上で、動作の手順が何個か重なると、そこでも意識が切れてさまに全然ならなかった。しかし難しいことに挑戦すると、少しでも相手に注意や意識が向かうようになるので良い訓練になった。自分の動作や意識のぎこちなさがわからないと改善しようがない。

8) 「硬直のおっさんを起こす」ワーク(21組・仰臥位)

仰臥位で硬直して寝ている人の首の後ろに片手を当てて、お腹にもう片方の手を置く。吐く息に合わせてお腹の手を相手の下から上、頭側に転がすように当てて、上に来たら上体を起こす。

 これも先生は簡単にやっているように見えて、実際に自分たちがやると大変難しいワークだった。ちゃんと手で相手を感じて相手に的確な方向へ信号を送ってあげないと、まったく相手に作用しない。自分たちがやっていると、「つもり」だけだ。とにかく頭でなく、手の感覚、全身の感覚を研ぎ澄ませてしないとだめだ。

9) 「歌を目で聞く」ワーク(21組・坐位)

 最後の短時間、Oさんと歌を目で聴くワークを行った。歌っている相手の微細な筋肉や表情、体動の揺らぎが、自分のことのように感じられた。今まで、歌っている相手の動きは自分とは関係のない他人事だったなあ、と思い、新鮮に感じた。スマホの写真で自分の顔を確認すると、まだ目などで相手をはじいているが、前よりにらみの強さが減っているように感じた。

 

B)    今回の明鏡塾を終えて

無駄を省くことが、仕事上いろいろな面で有効だと痛感する。しかし極めるのはすごく難しい。自分の体のくせ、意識のくせに気づいて、コツコツと取り除く。地道な作業であるが、奥が深く、楽しい。結果、自分を取り巻く環境や人々の反応が良くなっていくのもうれしい。

相手を目で聴くのも、明鏡塾6期目で初めて相手を自分のことのように感じられた。相手と自分が溶け合う状態になるにはまだまだだが、相手が自分だという実感が一瞬でも持てたのはうれしかった。生きているのはなんのためでもないが、相手と自分が一緒に感じられる瞬間を持てると歓喜だ。一流の歌手や芸術家は観客との間で気持ちを動かして共有できる力がある。逆に観客の気持ちを動かしたり、気持ちが共有できなければ、一流ではない。そんなことが感じられた大阪5期だった。

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